夏の蝶を通して信州の自然の豊かさを知ろう

アサギマダラ

自然豊かな長野の生物相の豊かさを実感するのが、外を歩いていて蝶に出会う時です。

都会で目にするのはモンキチョウやアゲハチョウなどの限られた種類ですが、長野ではじつにさまざまな種類の蝶を目にする機会があります。

筆者の住居は北アルプス地域にあるため特に山間地に生息する蝶が多く見られ、この夏も家の周りで何度も蝶を見かける機会がありました。

今回の特集では筆者が出会った蝶を紹介することを通じて、長野の自然の豊かさに触れていただければと思います。

まず、トップ画像は鮮やかな翅の色が印象的な蝶、有名なアサギマダラです。

フジバカマなどの植物を好むこの蝶は、日本全土に分布していますが主に標高の高い山地に生息しています。長野県内の宮田村ではアサギマダラが多く飛来することで知られるアサギマダラの里があり、信州人にも愛されている蝶であることが判ります。

翅を広げたアサギマダラの姿は夏の深い緑の中でも色鮮やかで心の琴線に触れるものがあります。この蝶を見つけたのは山の裾野を散策していた時でしたが、深い山の麓特有の冷たい空気の中でこの蝶と出会ったことで「人間の住処と離れ違う場所へ足を踏み入れた」という印象的な感覚を覚えました。

次に登場するのはこの橙色の翅を持つ蝶で、ヒオドシチョウです。筆者の自宅の庭の縁台に止まっていたところを撮影しました。

この蝶も同様に日本全国に分布する蝶ですが、主として初夏に見られる種でエノキの樹などを好みます。県によっては絶滅危惧種としての指定を受けている蝶です。ヒオドシとはクチナシなどの染料で染めた鎧の一種を示す名前で、その印象的な橙色は夏の草木の緑色によく映えていました。

次の一枚はイチモンジチョウです。

低山に住む蝶で、花や果物を好みます。筆者の家のそばで見かけたときもやはり庭木の花を物色している最中でした。

これも離島を除く日本本土の広い地域で見られる蝶ですが、都市部ではあまり見られません。ですが、近隣種のアサマイチモンジ(浅間山に由来する名前と言われています)などと同様、山の多くそびえる長野ではさほど珍しくはない蝶です。

この夏に出会ったこれらの蝶は長野県以外の地域でも見ることのできる昆虫ですが、自然豊かな長野ではそれらが好む植物や住環境が豊富にあるため、少し山に近いところに足を伸ばせばすぐに見つけることができます。

夏の蝶との出会いを通して、改めて自然のありがたみを感じることができました。都会では人間以外には生き物の存在をあまり意識することはありません(せいぜいペットやカラスや鳩などの生き物に限られるでしょう)。

ですが、自然の多いこの地では、人間は無数にいる生き物の一種にすぎず、多くの生き物たちと共存しているのだということを強く意識させられます。

これからは秋が来て、虫の音も賑やかになります。ぜひ、皆さんも信州の自然の多い地域に足を伸ばし、蝶やその他の昆虫たちの姿に目を留めてみてはいかがでしょうか。